これまで「130万円の壁」などと言われていた(主に)配偶者などの働き方に関する制度が変わるようです。
ざっくりいうと、これまでは年収130万円を超える見込みのパート、アルバイトについては社会保険(健康保険、厚生年金)の加入が義務付けられていましたが、2016年10月からは「正社員500名以上の企業にパート・アルバイトとして勤め、年収約106万円を超える人」も社会保険料を納める必要がでてくるということのようです。
具体的には、以下の要件すべてを満たす短時間労働者(パート、アルバイト)は社会保険(健康保険、厚生年金)の加入が義務付けられます。
*短時間労働者(パート、アルバイト)を除く厚生年金の被保険者(つまり正社員か)が1年のうち6か月以上にわたり500人を超える見込みのある会社に勤務(特定適用事業所)
*週20時間以上勤務
*雇用期間1年以上の見込み
*賃金月額8.8万円(≒年間106万円)以上(割増賃金、ボーナス等は除く)
*学生は対象外
社会保険料としていくら徴収されるのか、元はとれるのか?
仮に年収106万円の場合で計算してみましょう。
健康保険料は収入の約5%、厚生年金保険料は収入の約9%です。
→合わせて約14%
社会保険料ってだいたい収入の14%徴収されます。
年収106万円 × 14% = 約15万円(月々約1.2万円)
月8.8万円の収入から1.2万円も引かれたらキツイですね。
年収でいえばこれまで106万円だったものが91万円程になってしまいます。
これならいっそのこと正社員としてもっと収入を得ようという人も出てくるでしょうし、働き方を考えさせられます。
ちなみに以下のリーフレットは健康保険は言及せず「年金」のみを説明していますので、注意が必要です↓
日本年金機構 リーフレット「短時間労働者に対する適用拡大に係る事務の取り扱い」(PDF 5,433KB)
ところで新たに社会保険料を納めることになったとして、老後に受け取る公的年金で元はとれるのでしょうか?
たとえば年収106万円で20年間社会保険料を納めたとしましょう。
年収106万円×14%×20年=社会保険料約300万円
厚生年金の年間受取り額は、厚生年金保険料を納めていた期間の総報酬額のだいたい0.55%となっています(少子高齢化のため将来は減少する見込み)。
年収106万円×20年×0.55%=約12万円
社会保険料として支払った300万円を回収するのに25年かかることになります。
65歳から年金を受け取るとすれば90歳まで生きなければ回収できません。
もし将来年金受取開始が70歳からになれば95歳まで生きなければ回収できません。
さらに年金受取額が現行より引き下げられますので、きっとほとんどの人が支払った社会保険料を回収できない制度が始まるといえるでしょう。
会社員の妻などはもともと夫の健康保険の対象者であるので、今回の制度改正で健康保険としてメリットがあるのは傷病手当、出産手当くらいだろうか。
財政を健全化させたい日本政府の思惑(想像)
この制度改正により新たに社会保険適用となる対象者は1号被保険者で約10万人、3号被保険者(会社員の妻など)で約10万人、ざっくり総計で約25万人と見込まれるとのこと。
ただし、これを機に働く時間を抑制して106万円以下に収めようという人も出てくるだろうから実際どうなるかは分からない。
なお、企業も新たに社会保険料を負担する本人と同額を企業も負担することになる。企業にとっても負担増となる。
日本政府の思惑は以下のような感じだと思う。
・社会保険料収入増→財源増&将来の年金減額幅抑制
・130万円以内にこだわらずもっと稼ごうという意識の拡大→女性活用(GDP増)
・制度的に優遇されている3号被保険者数の削減
・企業から政府への資金回収
・増えた収入を資産運用にまわす
景気に冷や水をあびせる消費税増税よりも確実に財政をプラスにする方法かもしれない。だから大きな問題にもならずに制度改正が進められているのだろう。
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