30~64歳の子のない妻の遺族厚生年金が生涯給付→5年給付に変更となる方向

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30~64歳の子のない妻の遺族厚生年金が生涯給付→5年給付に変更となる

厚生労働省は、子のない妻の遺族厚生年金について、30歳以上の妻の場合、現行では生涯給付を受けられるものを、「5年給付」にしようとしているらしい。

遺族年金制度等の見直しについて_厚生労働省
【PDF】厚生労働省『遺族年金制度等の見直しについて2024年7月30日』

現行では、30歳~64歳までの子のない妻は、会社員など厚生年金に加入している夫が亡くなった場合、以下の遺族年金が支給される。

【現行制度】
30~39歳 年40万円程(遺族厚生年金)
40~64歳 年100万円程(遺族厚生年金+中高齢寡婦加算)

*夫の過去の平均年収が400万円程の場合
*子供が18歳を超えた場合も子のない妻となる

現行制度では、たとえば30歳の子のない妻で厚生年金加入の夫が亡くなった場合、64歳までに、
30~39歳 40万円×10年=400万円
40~64歳 100万円×25年=2500万円
合計2900万円を受け取れるわけだが、
これが【改正案】では、
30歳~5年間×40万円=200万円しか受け取れない、となるわけだ。

なお、この改正案は夫が会社員など厚生年金に加入している子のない30歳以上の妻が対象となる。
・30歳未満の子のない妻&夫は会社員など厚生年金→現行でも5年受給(現行と変更なし
・30歳未満の子のある妻&夫は会社員など厚生年金→生涯受給(現行と変更なし
・子のない妻&夫が自営業など国民年金→遺族年金なし(現行と変更なし

厚労省によれば、2023年度に子のない30歳以上の妻で夫が会社員等の厚生年金で夫が亡くなった人の人数は以下のとおり。
30~34歳 約100人
35~39歳 約160人
40~44歳 約420人
45~49歳 約1550人
50~54歳 約4670人
55~59歳 約9260人
概ね2万人弱くらいが毎年影響を受ける改正となる。50代以降で夫が亡くなった子のない妻は、子供が高校を卒業して定義上「子のない妻」になっているため、人数が多いのだと思われる。

5年給付になる対象の妻は、制度施行の時に一気に変更するのではなく、段階的に対象年齢を上げていって、相当の期間をかけて制度改正となる方向。

なぜ子のない30歳以上の妻の遺族厚生年金が生涯給付→”5年給付”に変更となるのか

子のない30歳以上の妻の遺族厚生年金が生涯給付→”5年給付”に変更となる理由は大きく2つ

女性の就業率が上がっている
性別による固定的役割分担を前提としない設計

濃い色が共働き世帯の数

共働き世帯は、昭和60年頃に43%程だったが、現在では75%程となっている。

年金制度の創設期から長期間が経過し、 20 ~ 50 代の女性の就業率は、男性と遜色がなくなってきている。

若い世代ほど高齢期まで各年齢層において高い就業率を維持しており、2040年代には80%台後半の就業率が見込まれる。つまり、男性が主たる生計維持者であることを前提とした認識は古いものということを表している。

子のない夫も遺族厚生年金を受け取れるようになる

現行制度では、男性は働けるわけだから、子のない夫は会社員等の妻が亡くなった場合でも遺族厚生年金は60歳まで受け取ることができない、という整理である。

それが、この改正案では、男女差をなくし、子のない夫でも妻と同様に5年間遺族厚生年金を受け取ることができるようになる。

30~64歳の子のない妻の遺族厚生年金が生涯給付→5年給付に変更となることの問題点

女性の就業率が男性と遜色ないとか、性差による固定的役割分担を前提としないというのは分かるが、現実的な問題として、女性の正規雇用比率も考えなくてはならない。

「女性でも働ける/働いているんだから、子供がいないなら遺族厚生年金は5年で十分だよね」という今回の改正案。

しかし、働いているといっても女性の正規雇用比率は低く、30代以降は半分以下が実態。

非正規雇用であれば賃金も低く、会社員の夫が亡くなった場合、生活水準は相当落ちることが予想される。

男女差をなくしていこう、という方向性はいいと思う。ただ、該当する女性にとっては大きな変更となる。

しかし夫が亡くなることを前提にしているから、自分が将来この改正で影響を受けるという想像はつかない。顕在化していない人たちを対象とした改正だから反対意見は出にくい。

子のない30歳以上の妻については、これまでが優遇され過ぎていて、男女間の不公平がなくなると見るべきかもしれない。この法案が可決されれば数年内に施行されるのだろう。

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