なぜ自分でライフプラン表をつくる必要があるのか
資産家などであまりお金の心配がいらない人は別だが、多くの人にとって将来の収支を見える化して今後の家計運営を考えておくことは有用である。
家計運営は、「基本生活費」「住宅費」「子供の教育費」「働き方」「現在の資産状況」「保険」「車」「趣味」「税金」などが総合的に関連し、年間収支や今後の資産推移という結果につながる。
感覚的には今貯蓄がいくらあって、年間でどのくらい貯蓄ができているかはなんとなく分かると思う。ただ、1年後、2年後、3年後はどうだろうか。意外と予測がつきにくいことが多いのではないか。ましてや10年後、30年後となるとその時に貯蓄がいくらくらいあるのか頭の中だけでは想像がつきにくい。
たとえば住宅購入をする、子供が産まれる、転職するなど大きく収支が変わる予定がある場合、今後の収支がどうなるのかを整理してみることで、何かを見直す必要性に気づくことがあるかもしれない。
特に、人生で一番大きな買い物である住宅購入においては、無理な計画をベースにしてしまった場合、取り返しがつかなくなるおそれがある。
私は過去に大手住宅メーカーに勤務していたが、住宅販売会社は住宅が売れればそれでよく、購入後の顧客の家計がどうなるかなどまったく関心がないと思っておいた方がいい。
また、金融機関も自社の基準でローンの貸付ができればそれでOKで、返済が滞れば場合によっては住宅を売却するなどの選択も必要になってきてしまう。
つまり、住宅購入の場面で、その後の生涯収支の見通しについて住宅販売業者も金融機関も頼れないのだ。
ライフプラン表を作成してくれる保険会社もあるが、彼らは保険を販売することを念頭にライフプランニングを行うため「しっくりこなかった」「自分で手直ししたいけど紙ベースだったのでできなかった」という声を聞く。
よくある失敗が、老後資金として高額な貯蓄系の保険に加入していて(加入させられ)、その後の住宅購入資金や子供の教育費が足りなくなるケース。仕方なく貯蓄系の保険を解約したり減額するが、払い込んだ保険料よりも少ない額しか戻ってこない。冷静にライフプランニングを行っていればそのようなことはなかったと思う事例がしばしばある。
また、夫婦共働きでこれから住宅を購入する場合。夫婦共働きなので現時点では世帯収入が多く、その分支出も多い。そして住宅購入とともに子供も増え、妻は育休となり収入が一時的に減少、さらに自動車も購入するというケースがある。
昨今の住宅価格は高く、これまでの生活水準をかなり落とさなければならない、ということがライフプランをつくることで分かる。
「ライフプラン表の作成は意味がない」という人もいる。それは不確実な現代において未来がどうなるかは分からないので、10年後や30年後のシミュレーションなど参考にならない、というわけだ。
しかしそれはメンテナンスを前提にしていない考え方だと思う。
ライフプラン表は一度つくっても思いのほか収支が変わるので、たとえば年1回程度の見直しは必要である。毎年見直していくことで、予測精度が上がって将来に対する家計への安心感が増していく。
ライフプラン表をつくるということはいわば、「想像力の拡張作業」だと思う。
冷静に将来の数字を予測しておくことで、それをしなかった場合に比べて、何か大きな決断をするときの経済的な根拠の一つになり得る。
したがって、ライフプラン表を自分でつくって定期的にメンテナンスをしていくことは漠然とした不安を軽減し、自信をもった家計運営ができていくことにつながる。
自分でライフプラン表を作成し、「どれだけ節約すればよいのか」、「いくらまでの住宅購入なら安全か」、「子供は何人までなら大丈夫そうか」、「今後の働き方」など検討する際の一つの参考にするとよいと思う。
エクセルでライフプラン表をつくるメリット
紙とペンでもライフプラン表はつくれると思うが、やはりエクセルが便利だ。
エクセルなら数字をきれいに整理できて自動計算もできるし、グラフ化もできる。シートやファイルをコピーして複数のパターンをつくったり、メンテナンスもしやすい。
しかし一から自分でエクセルをつかってライフプラン表をつくろうとするとかなり難しい。不確実な現代においてライフプランニングの重要性は増しているが、自分でつくるのが難しいというギャップに気づき、自分でカンタンにつくれるエクセル・ライフプラン表のフォーマットをつくった。
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最初に作成した2006年以降、折に触れて改善を重ねてきている。
将来の家計をまじめに考えたい人に是非使ってほしい。
PCにエクセルが入っていなくてもGoogleスプレッドシートでも使えるし、画面が小さくなってしまうがスマホでもエクセルアプリまたはGoogleスプレッドシートアプリをダウンロードすれば使えてしまう。
一方で、ライフプラン表をつくる手段はほかにも以下のようなものがある。
■FP協会や銀行、証券会社などのサイト
→項目を選択していくことである程度のグラフが出力される形式が多いが、収支数字の詳細確認ができなかったりメンテナンスが難しい。
■独立系FPに有料で依頼
→複数回の面談と個人情報の提供が必要。
■保険会社に無料で依頼
→保険販売のためのライフプランニングになりがち。自分で数字の調整ができないことが多い。
■自分でつくるオンラインサービス
→エクセルに比べてメンテナンスしにくい。
したがって、自分でサクサクつくれてメンテナンスもしやすいという意味ではエクセルが最も適していると思う。
まとめ
・ライフプラン表をつくって、安心感のある家計運営ができるようになろう。
・ライフプラン表の作成にはエクセルが適している。
・必ず定期的に(年1回など)メンテナンスをしよう。
少子高齢化、人口減少、経済低成長という現代日本において、エクセル・ライフプラン表が自分にあった働き方や生き方を考える材料の一つになれば幸いである。
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