認知症とは?原因と治療・予防法

認知症
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認知症とは?〜認知症の種類、メカニズムと症状〜

認知症とは、記憶力や思考力、判断力などの認知機能が徐々に低下し、日常生活に支障をきたす病気。これは単なる「物忘れ」とは異なり、脳の機能そのものが障害されることにより、生活の質が大きく損なわれる特徴がある。

認知症は本人だけでなく家族や介護者、社会全体に影響を及ぼすことと、認知症になってしまったら現代医学では治療手段がないため、その予防や、早期発見と進行の抑制が重要になる。

単なる物忘れ認知症
朝食べたものを思い出せない朝食べたことすら忘れる
物事を思い出せないことがある(自覚あり)忘れたことすら忘れている(自覚なし

認知症には大きく3種類ある。最も多いのがアルツハイマー型認知症で記憶力が著しく衰える最もポピュラーなもの。レビー小体型認知症というものもあり、脳内に異常なたんぱく質が蓄積して脳機能を阻害するという意味ではアルツハイマー型と同様。血管性認知症は、脳梗塞や事故により脳機能が阻害されるもので、急激であるという点が他のふたつと異なる。

認知症の種類メカニズム症状
アルツハイマー型認知症
(70%)
脳内にアミロイドβという異常たんぱく質が10~20年かけて蓄積し、脳機能を阻害物忘れ、不安、抑うつ、暴言、暴力など
レビー小体型認知症
(15%)
レビー小体というたんぱく質が脳内に蓄積し、脳機能を阻害物忘れ、抑うつ、幻覚、手足のふるえ、睡眠時の異常行動、体の不調など
血管性認知症
(15%)
脳梗塞や事故によって脳の血流が阻害される記憶障害、運動麻痺、感覚障害など

最もなりたくない病気は「認知症」

2024年、太陽生命の調査によれば、最もなりたくない病気第1位は「認知症」とのこと。次いで「がん」。

認知症もがんも、身近な親類や友人・知人が罹患して、その実態認知度は高いと思われるが、自分がなりたくない病気としては認知症の方が嫌われている。日常の生活や行動について脳機能の低下のために家族に迷惑を掛けたくない、という思いが強いのかもしれない。

認知症の初期症状は、記憶障害、混乱、判断力の低下などが挙げられる。具体的には、物忘れがひどくなったり、日時や場所を忘れたり、日常の簡単な作業ができなくなるなどの兆候が見られる。また、言葉が出にくくなる、同じことを何度も繰り返すといった言語機能の低下や、感情が不安定になることもある。

認知症が進行すれば、仕事もできないし、周囲との会話もおぼつかない、車の運転もできない、一人で出歩くこともできない、何かの契約行為もできなくなるし、食事や排せつといった日常生活にも支障をきたす。

年代別の認知症患者の割合

東京都健康長寿医療センター研究所(2013年の研究)によれば、年代別の認知症の割合は以下の通り。60代では認知症になっている人は割合として多くないが、80歳を超えると認知症はごく普通のこととなる。やはり、個人的に思うのは80歳を超えると車の運転は控えた方がよさそう、ということ。

年代 男性 女性
65-69歳 36人に1人 26人に1人
70-74歳 20人に1人 26人に1人
75-79歳 9人に1人 7人に1人
80-84歳 6人に1人 4人に1人
85-89歳 3人に1人 2人に1人
90-94歳 2人に1人 2人に1人
95歳以上 2人に1人 1人に1人

認知症発症の原因とリスク因子

事故や脳梗塞等でなければ、認知症はアルツハイマー型やレビー小体型のように、10~20年かけて、たんぱく質の一種が脳内に徐々に蓄積していき、脳の活動を阻害する、ということになる。

このたんぱく質がなぜ蓄積していくのか解明するために研究が行われているが、はっきりとした原因は今のところ分かっていない。

ひとつのヒントとしては、東京都健康長寿医療センターが2023年に発表した研究報告によると、犬を飼っているひとは犬を飼っていないひとに比べて認知症になるリスクが40%も低かったとのこと。

これはネコではだめで、なぜ犬がいいのかというと毎日散歩にいくから。この日常的な運動が認知症を抑制するということが分かっている。

また、社会的に孤立していない人はさらに認知症になるリスクが低かったとのこと。

理化学研究所が2024年に発表したレポートによれば、認知症マウスに対してドーパミンが出るようにしたところ、脳内に蓄積していたアミロイドβが減少し、認知機能が改善したとのこと。

現代医学では、長年かけて脳内に蓄積してしまったアミロイドβを取り除くことはできないとされているため、これは大きな発見。人に対しても有効で安全な治療法が確認されれば、80~90歳で認知症と診断されたとしても認知機能が回復できる世界が来るかもしれない。

認知症の初期段階の症状の見分け方

初期段階の認知症は、単なる加齢による物忘れと区別が難しいことがある。例えば、何度も同じことを言う日付や場所がわからなくなる、日常的な決断が難しくなるといった症状が見られた場合、認知症の初期段階を疑うべき。

また、65歳未満の場合は、「若年性認知症」とカテゴリされ、早い人だと40代でも軽度認知障害(MCI:Mild Cognitive Impairment)と診断されることがある。家族や周囲の人がこれらの変化に気づくことが、早期診断、進行の抑制につながる。

2023年に認知症薬として薬事承認されたレカネマブ

レカネマブ(一般名)は、アルツハイマー病の治療薬として米国バイオジェンと日本エーザイが共同開発し、日本では2023年に保険適応医薬品として厚労省に承認された。

対象となる患者は軽度認知障害(MCI)とアルツハイマー型認知症の軽度の人であり、しっかり認知症になってしまった人には向かない。

認知症薬として画期的な開発とされているが、その効果は認知症に至るスピードを2~3年遅らせる程度。しかも薬価が高く、年間300万円ほどかかる。保険適応されたため、日本では高額療養費制度が使えることで、年収600万円以下くらいの人であれば、自己負担は年50万円程となる。コストパフォーマンス的には、微妙といったところ。

なお、レカネマブは日本のみならず、米国、日本、中国、韓国、香港、イスラエル、 アラブ首長国連邦でも認知症に対して標準的な治療に使用する医薬品として国に承認され、欧州各国やその他の地域でも承認申請が行われている。

認知症というポピュラーな病気に対して、少しでも効果が期待できるレカネマブ。お金を払える人と国から医療費として売上を上げられる製薬会社と医師・医療機関にとってはおいしい話か。

認知症予防のための生活習慣

認知症の予防には以下のような生活習慣が有効と考えられる。

✓ 日常的な運動
✓ 周囲とのかかわり
✓ 認知機能の低下を防ぐ食事
✓ 新しいチャレンジ

日常的な運動

「犬の散歩」に例示されるとおり、日常的な運動は認知症リスクを低減させる。20分以上の有酸素運動が効果的。

周囲とのかかわり

周囲の人と日常的に関わりを持ち、社会的に孤立しないことが重要。特に高齢男性は女性に比べて他人とのコミュニケーションが途絶えてしまう人が多い。地域のコミュニティに参加するとか、ボランティア、または無理のない仕事を継続することも社会的な孤立を防ぐ。

認知機能の低下を防ぐ食事

以下のような食事・食材は認知機能低下の防止に効果があるとされる。
・青魚(DHAやEPA)
・野菜
・フルーツ
・大豆製品
・海藻
・ナッツ
・赤ワイン
・オリーブオイル
・コーヒー、紅茶
・カレー

一方で、お酒をよく飲む人、1日に飲む酒量の多い人は認知症になりやすいということが分かっている。

新しいチャレンジ

上述のようにドーパミンがアミロイドβの蓄積を減少させる可能性がある。ドーパミンを出すためには、脳に適切な刺激を与えることが必要で、適度な有酸素運動、十分な睡眠、日光浴、瞑想や音楽などでリラックスなどに加えて、新しいチャレンジが有効とされる。

同じ毎日ではなく、行ったことがない場所へ行ってみるとか、意識的に何か新しいことにチャレンジすることが重要。

毎年9月21日は世界アルツハイマーデー

毎年9月21日は「世界アルツハイマーデー」として、認知症に対する理解を深めるための啓発活動が世界中で行われている。日本でも、9月は「認知症月間」となっており、認知症に関するイベントやポスター掲示、SNSでの情報発信がなされている。

まとめ

早いと40代から、脳内にアミロイドβなど無用なたんぱく質の蓄積が始まり、80歳を過ぎると多くの人が認知症となり、他人の手を借りないと生活できないような支障をきたす。

中年を過ぎたら、日常的な運動や新しいチャレンジなど脳に適度な刺激を与えることで、認知症予防にもなるし有意義なライフスタイルになるものと思う。

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