モノ保険は新価(再調達価額)か時価どちらかをベースにする
火災保険や地震保険、動産総合保険、機械保険、運送保険など自社の「所有物件」に対する保険をいわゆるモノ保険と呼んだりします。自動車保険の車両保険部分もモノ保険ですね。
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それらモノ保険を契約する際は、まずは対象物件の価値を評価しなくてはなりません。保険上の対象物件の価値のことを「保険価額」といい、保険価額は新価(再調達価額)と時価の2つしかありません。
新価(再調達価額)とは?
対象物件が全損したことを想定してみましょう。同等グレードの物を再度購入しないといけないとします。その時の価額が新価(再調達価額)です。
新価(再調達価額)は、取得した時の価格と必ずしもイコールではありません。たとえば、10年前、20年前に建築した建物は、いま同等のものを建てようと思うと、当時よりも高くなっているケースが多いでしょう。最近は震災の影響やオリンピック、インバウンド向けの建設、リニアモーターカーの建設など建設が盛んな分、人手が不足し賃金が上昇、建築単価の上昇につながっていると言われています。
対象物件の評価にあたっては、各保険会社では「新価係数・時価係数」というものを用意しており、どんな用途の物件で何構造で、いつ作られたものかに応じて、現在の新価(再調達価額)または時価を算出することができるようになっています。
もし、新築当時の金額が分からなければ、用途、構造、面積などに応じて簡易評価することも可能です。ただ、企業であれば固定資産台帳がありますから、それをベースに評価すると、より正しい評価ができるものと思います。
対象物件の評価については保険代理店または保険会社が提案してくれると思いますので、正しい保険契約のためにも確認しておきましょう。
保険契約にあたっては、保険価額とは別に「保険金額」を決める必要があります。保険金額とは、保険事故の際、保険金として受け取ることのできる最大の金額のことです。保険価額と保険金額を同額として契約すれば最も分かりやすく事故時にトラブルになりくいと思いますが、保険料を節約するなどの目的のために保険金額を縮小して契約することも可能です。
時価とは?
時価とは新価(再調達価額)から、経年と使用による減価分を差し引いた金額のことです。
自動車に例えると分かりやすく、例えば新車で300万円だった車も、10年経てば50万円程の価値になったりしますね。この50万円がその車にとっての時価額です。(売却価格ではなく、購入価格なので、中古車市場価格相当と考えればよいでしょう)
建物の場合は、用途や構造等により年1~2%程度減価させることが多いです。
機械設備等の場合は、その種類によって様々で陳腐化が激しいものもあるので一概にはいえないかもしれませんが、よく分からないときには平均として年5%程度減価させた額を時価額とすることがあります。
何十年も使用している建物や機械設備について時価額を算出しようとすると、あまりにも小さい金額になってしまい、保険として十分機能するのか疑問に思うかもしれません。
保険の考え方としては建物や機械設備等が必要なメンテナンスがされていて機能維持されている場合には、ずいぶん古い物件でも新価の50%を下限として時価額の設定を認めてくれるケースもあります。
このように時価額を設定する場合には、新価(再調達価額)よりも評価が難しくなる場合がありますので、保険契約にあたっては考え方を整理しておくことが望ましいでしょう。
もちろん、時価額ベースで契約した場合には、最大で受取ることができる保険金も時価額が限度となります。その分保険料も安くなる、ということです。
トラブル防止のために保険価額と保険金額を理解しておこう
新価(再調達価額)ベースでも時価ベースでも、もし保険価額以上の保険金額設定になっていたら、それは超過保険といい、保険料のムダ払いになってしまいます。損害保険は基本的に実損分について保険金が支払われます。保険事故が起きて保険金を受け取って儲かるような、つまり“焼け太り”にはならない仕組みです。
逆に、保険価額よりも保険金額が小さい場合は、復旧費用が足りなくなるケースがあります。保険商品によっては保険価額よりも小さい保険金額設定で契約しても事故時に復旧費用を削減せず支払われるものがありますが、それは契約時に割増保険料が取られていますので仕組みを理解しておくとベターでしょう。
事故時のトラブル防止のためにも保険価額と保険金額の関係性についてはきちんと確認しておくことが重要です。
(注)記載のある各保険については一般的な内容の説明です。