利益保険金が支払われる条件とは?
近年、大型台風が来る場合、各鉄道では強風になりそうな時間帯について運行を取りやめたり、制限することを事前に決めて公表することが多くなったように思います。
電車が動かないということは、通勤できない人も大勢いて、商業施設や会社など休みにしたり、自宅勤務にしたりするところも多数出てきます。
各社、無理をしない、リスクを回避するディフェンシブな対応かもしれませんが、むしろ人的被害を抑制するための賢明な対応であると概ね評価されているように感じます。
ところで、そういった企業が利益保険に加入していて、台風が来るので会社を休みにした場合、利益保険金は支払われるのでしょうか?
利益保険の約款には、
補償する事故につき保険の対象に生じた損害により営業が休止または阻害されたために生じた利益損害について保険金を払う
というように記載されています。
・補償する事故
・保険の対象に損害が生じたことにより
・営業が休止または阻害
この辺りがポイントになりそうです。
まず、利益保険で補償する事故につき、風災が入っていることが要件になります。保険料節約のために風災を除外していたら利益保険金は支払われません。
風災が補償される契約だとして、つぎに、保険の対象に物的損害が発生していることが要件になります。物的損害が何もないと利益保険金は支払われません。
また、その物的損害によって、やむを得ず営業が休止または阻害されることが要件となります。客観的にみて物的損害、すなわち、営業不可能、と見なされる必要があります。物的損害があったとしても、客観的にみて「でも、営業はできるよね」と見なされれば利益保険金は支払われません。
従いまして、台風が来るから、または鉄道が止まるから休業だけでは利益保険金を支払えるとは言えません。物的損害があって、風災でも補償される契約になっていて、物的損害の結果やむなく営業休止または阻害、という状況になって初めて利益保険金が支払われることになるのです。
利益保険で支払われる保険金の額
利益保険では、以下のような契約形態が多いです。
・売上高方式(収益減少分について保険金を払う)
・約定補償率XX%(粗利率以下で設定)
・支払限度額、免責金額を設定
・補償期間Xか月(12ヶ月以内で設定)
・24時間免責
物的損害の結果、利益保険金が支払われるとして、たとえば10/1の台風により10/1~10/3までの3日間休業したとしましょう。
24時間免責というのは誤解を生じやすい表現ですが、事故発生時刻から24時間ではなく、事故発生時のその日の0時~24時を免責にするというものです。
ですから翌日の0時から保険金支払対象の日となります。
10/2および10/3の見込まれていた売上高×約定補償率-免責金額=利益保険金という考え方になります。
仮に10/2&10/3の見込み売上高が合計1000万円・約定補償率が30%、免責金額がゼロだとすれば、利益保険金は、
売上減少分1000万円×約定補償率30%-免責金額ゼロ=300万円
となります。
利益保険はいわゆる粗利額を補償する保険ですから、休業してその期間売上が立たなかったとしても、従業員の給与や経常費については保険金でカバーすることができます。
電気・ガス・水道が止まったら?
利益保険には「敷地外ユーティリティー」という補償項目があります。
この補償項目が補償される契約内容でしたら、電気・ガス・水道が止まって、営業を休止せざるを得ないとなれば、利益保険金が支払われます。
また、場合によっては関係する鉄道が止まった場合も敷地外ユーティリティの一環として、利益保険金支払の対象とすることができる場合があります。
まとめ
利益保険は、物的損害があること、物的損害の結果、やむを得ず休業せざるを得ない、という場合に保険金が支払われます。
支払われる保険金額についても、失われた売上高は過去からの想定のものですので、単純ではありません。
しかしながら、利益保険金が支払われる場合についてある程度理解しておくことで、保険金請求がスムーズになる、または請求漏れを防ぐ手立てになりうるでしょう。
(注)記載のある各保険については一般的な内容の説明です。