数年おきに実施される火災保険料率の改定
火災保険は、概ね3~5年スパンで料率改定が行われることが多く、各損保会社の改定実施タイミングは完全に一致はしませんが、概ね前回の改定は2019年10月、前々回の改定は2015年10月でした。
2015年10月の改定では、損害保険料率算出機構が火災保険(住宅総合保険)の参考純率を3.5%引き上げており、2019年秋の火災保険改定には、(住宅総合保険)の参考純率を5.5%引き上げています。
参考純率とは、保険料のうち、保険金支払に充てられる「純保険料率」のことであり、火災保険商品のうち、住宅総合保険という住宅向けのポピュラーな補償内容をベースにしています。事業用物件に対する火災保険は住宅用の火災保険とは料率体系が異なりますが、それでもやはり同じように保険料はUP傾向となっています。
参考純率はあくまで”参考”なので、各損害保険会社は、必ずしもそれに従う必要はありませんが、平均すれば概ね参考純率と同程度の料率改定が行われているようです。
ここで考慮すべきは、どの火災保険契約も一律に〇%程度保険料がアップするわけではなく、都道府県ごと、建物構造、用途などに応じて、それぞれアップダウンがあり、全部平均すれば〇%程度のアップになるということです。
たとえば参考純率が5%UPした場合でも、都道府県、建物構造、用途などが悪い意味で合致すると実際の保険料は2~3割アップということもありますので、料率改定がある際は事前に情報収集をしておく必要があると思います。
なお、2019年10月の参考純率5.5%UPについては、損害保険料率算出機構が2018年5月に金融庁へ提出しています。
つまり、2018年7月の西日本豪雨や大型台風(20号、21号、24号など)の影響は加味されていないわけです。
特に台風21号については、損保会社合計で1兆円を超える保険金支払いになっており、1回の台風による保険金支払額としては過去最大級であり、この辺りが参考純率の算出に含まれていないため、これからの参考純率改定にも注意しなければなりません。
消費増税もあった
2019年秋といえば消費増税もありました。
たとえばこれまで税込108円だったものが110円になるわけで、率でいえば約1.85%上がっています(110÷108)。
保険料には消費税はかからないのですが、消費増税は火災保険の保険金支払額に直接的に影響します。
火災保険の対象物件が保険事故により損傷し、その修理代には消費税がかかり、保険金は消費税込みの金額をベースにして支払いますので、消費増税は自動的に支払保険金アップにもつながるわけです。
保険会社は消費税が上がったからといって、それに連動して保険料を上げることはできませんので、消費増税も織り込みながら料率改定を検討します。
大型台風による被害、消費増税と保険料が上がる要因ばかりですね・・
保険料アップはどうしようもないのか?
長い目で見れば、保険料アップ傾向は仕方ないものと思いますが、以下のような方法で短期的には保険料アップを回避することも可能です。
1.長期契約を行う
事業用物件に対する火災保険は、最長で5年まで契約できることがほとんどです。
保険料率が高くなることがはっきりしていれば、料率がアップする前に5年契約など長期契約をしてしまう方法があります。
ただし、事業用物件に対する火災保険の長期契約は保険料一括払いが条件であることが多く、たとえば、5年契約をして、保険料は1年分ずつ毎年払う、ということができない保険会社・保険商品が多いです。
十分な現金をお持ちであれば、という前提にはなりますが、長期一括払いだと、長期契約による割引もありますので、結果的には保険料をだいぶ節約できる可能性があります。
2.補償内容を見直す
あたりまえの話ですが、補償内容のレベルを落とせば保険料は下がります。
これを機会に改めて不要な補償がないか、または免責金額の設定ができないかなど検討してみるのもよいと思います。
3.他社比較する
他の保険会社の見積もりや、他の保険代理店から見積もりを取得することで保険料が安くなる場合があります。
事業用物件に対する火災保険はある程度の保険料規模があって過去の損害率が良好であれば、交渉の余地がある場合があります。
(注)記載のある各保険については一般的な内容の説明です。