損害保険のなかでも、賠償責任保険特有ですが、「事故発生日ベース」「損害賠償請求ベース」という考え方があります。
事故が起きた際には、「事故発生日ベース」「損害賠償請求ベース」のいずれの方式で保険契約がなされているかで、保険金支払対象になる場合とならない場合があるので、念のため注意が必要です。
事故発生日ベース(オカランスベース)とは?
保険契約は通常、保険期間内に事故があった場合にのみ保険金を支払います。
(例)
保険期間:2019年4月1日~2020年4月1日
(それ以前に保険契約はないものとして)
・事故発生日が2019年4月15日の場合→保険金支払対象
・事故発生日が2019年3月15日の場合→保険金支払対象外
たとえば、PL保険(生産物賠償責任保険)の場合、過去に製造した機械の欠陥が原因で、2019年4月15日に対人または対物事故が起きた場合、保険金支払の対象になります。
その機械を製造した時期は関係なく、保険期間中に事故が発生したかどうかがポイントになります。
損害賠償請求ベース(クレームズメイドベース)とは?
一方、損害賠償請求ベースとは、被害者から「賠償請求があった時点」が保険期間中か否かがポイントになります。
実際の損害の発生時期が保険期間中より以前だとしても、実際にメールや文書などで被害者から賠償請求をする旨の連絡があったタイミングが保険期間中であれば保険金の支払対象になる、というわけです(その保険契約に設定される遡及日以降の事故に限る)。
ただし、保険金を受け取ることを目的として保険に新規加入することを防止するために、保険開始日時点で既に起きている損害や、賠償請求を受けるかもしれないと認識している事故があれば、それは保険対象外となります。
また、たとえば保険契約期間が2019年4月1日~2020年4月1日で、満期後更新しない場合、保険期間中に事故が発生しても、実際の賠償請求が保険期間中になされなかった場合も、保険金支払対象外になります。
このように少し分かりづらい「損害賠償請求ベース」の保険契約ですが、医薬品関係や食品関係などのPL保険、あるいは、役員賠償責任保険、E&O保険(業務過誤賠償責任保険)など、実際の事故(損害)発生時期が特定しにくい場合に採用されます。
他社に保険を切り替える際は注意が必要
保険会社によっては同じ賠償責任保険の種類でも、ある保険会社は「事故発生ベース」の設定しかなく、他の保険会社は「損害賠償請求ベース」しかないという場合があって、相見積もりをする際など気を付けなくてはなりません。
たとえば、それまで「損害賠償請求ベース」で契約していて、「事故発生ベース」に切り替えた場合、切り替え前の保険期間中の事故で被害者からまだ賠償請求がなされていないものについては、いずれの保険でも対象外になってしまう可能性があります。
賠償責任保険で複数の保険会社で相見積もりをする場合には、保険料ばかり気になってしまいがちですが、「事故発生日ベース」なのか「損害賠償請求ベース」なのかも必ず確認する必要があります。
(注)記載のある各保険については一般的な内容の説明です。