お客様の声 = 不満の声
「お客様の声」というと、一般的には顧客の喜びの声、満足の声や評判をイメージすることが多いかと思います。
どんな商品・サービスでも(ねつ造はルール違反ですが)、顧客の声や評判が売上にも影響してくることが分かっているので、企業が業績向上に取り組もうとする場合、積極的に顧客のポジティブな声をアピールするものです。
顧客からのポジティブな声は売上アップにつながると同時に社員のモチベーションアップにも役立つとされています。
しかしながら、損害保険会社において、これは業界の慣例だと思うのですが、「お客様の声」といえば、顧客からの不満の声を意味しています。
保険はその性質上、加入した時はとくに喜びはありません。保険証券が届いて「やったー!うれしー!」という人はまずいないでしょう。
保険の場合、加入手続きがスムーズとか、説明が分かりやすかったとか、きちんとした対応があたりまえで褒められることは少なく、手続きに不備があったとか遅いとか、説明が分かりにくいまたは間違っていたなどの場合、減点方式で顧客の満足度は下がっていくものです。
どの損害保険会社もお客様の声(不満の声)を集計し、業務改善に活用していて、保険会社のコールセンターへの問い合わせやアンケート等はもちろん、代理店に寄せられた不満の声も集計しています。
損保ジャパン「お客様の声白書2019」
損保ジャパンでは、「お客様の声白書2019」をHP上で公表しています。自社に寄せられた不満の声を公表するというのは勇気のいることだと思いますが、逆に自信の表れという捉え方もできるかもしれません。
いずれにしても、顧客から寄せられた不満の声に対して本気度を上げて取り組む姿勢を見せていると思います。
損害保険の場合、顧客との接点の多くは保険代理店が担いますので、保険代理店に責がある内容も多いです。
特に多い不満の上位5つは、以下のようになっています。
・保険金のお支払い手続きにおける誤りや遅延
・ご契約の変更手続きにおける遅延や誤り
・ご契約の解約手続きにおける遅延や誤り
・ご契約の勧誘方法や契約手続きに関するもの
・ご契約に関わる重要事項や商品内容の説明不足・誤りに関するもの
総じていえるのは、説明不足や誤りによる顧客との認識のズレや、手続き誤り、職務怠慢といったところでしょうか。
逆に考えれば、顧客の意向に沿って丁寧な説明を行い、商品性はもちろん、保険料支払いの流れ、変更時の手続き、事故時の手続きまで十分理解を得て、顧客からの申し出について速やかに対応をしていけば、不満の総数は減らしていくことができるのではないかと思います。
▼3年間の不満の声、件数の推移(損保ジャパン)
途中、集計方法が若干変わり同じ基準でカウントしていないので単純にこの推移を評価することは妥当ではないようですが、それでも傾向として不満の声は減少していっています。
不満の声への取り組みが効果を発揮しているということもあるでしょうし、2016年からはじまった保険業界における顧客の意向把握義務も影響しているのかもしれません。
特に保険業界として高齢者対応には力を入れ始めており、70歳(または75歳)以上の顧客との契約についてはより丁寧な対応を行うことと、その都度どのような対応を行ったか保険代理店は記録を残すことになっています。
SMS(ショートメッセージ)アンケート
損保ジャパンでは2018年の秋以降、自動車保険などの個人契約を行う際、携帯電話番号の登録を推奨しています。
保険契約後、SMS(ショートメッセージ)が届き、アンケートへの協力依頼がなされます。
(SMSからのアンケート回答はスマホのみ可能)
顧客からの声をたくさん集めて、経営のかじ取りに生かしていく考えなのでしょう。
(注)記載のある各保険については一般的な内容の説明です。