どんな企業でも多かれ少なかれ火災保険には加入していると思います。
建物や設備等を所有していればもちろんのこと、事務所を賃貸として借りていても、個人が賃貸物件を借りるときに家財の保険をかけるように、火災保険に加入していることが多いでしょう。
ただ、いざ火災保険で支払対象となる事故が起きた場合はどうすれば良いか。
また、企業であれば、その事故が決算に影響する場合もありますので、事故から何日くらいで保険金が支払われるのか考えてみたいと思います。
上記表のように火災保険といっても火災事故だけでなく、いろんな事故をカバーすることが可能ですし、大きく分けて、物件の修理費を補償する「財物補償」と、物件の損害に伴う休業を補償する「利益補償」があります。(どこまでカバーするかはある程度任意に決められる)
たとえば、台風で建物の一部が破損したとか、洪水により水没したとか、原因が分からないけどガラスが壊れていた、という場合、保険が使える可能性があります。
ちなみに今回は財物補償について以下説明しています。
修理費が概ね100万円以内の場合
火災保険の対象物件が破損したなどの損害を受けた場合、いくら保険金が支払われるか保険会社で査定を行いますが、最低限必要になるものは「事故日」「事故原因」「写真」「修理見積もり」です。
修理費が概ね100万円以内の場合でかつ、写真で事故原因と損害状況が確認できると損保会社が判断した場合、現場確認を省略して支払保険金額を被保険者へ案内しています。
事故発生後、事故報告がなされて、写真や修理見積もりの提供があってから、通常1週間以内には支払保険金の案内があります。支払保険金額に問題がなければ、保険金請求書を提出し、また1週間程度で保険金が支払われます。
つまり、事故発生から、すごく早い場合、2週間程度で保険金が支払われることもあります。修理見積もりがすぐに入手できるかどうかがポイントになりますね。
また、大型の台風後のように広範囲に被害が発生する場合は、修理業者がつかまりにくいのと保険査定が混みあうため、+2週間~1か月程度は見ておいた方がよいと思います。
修理費が概ね100万円以上の場合(現場確認が行われる場合)
必ずというわけではないのですが、損保会社の基準としては概ね100万円を超えたら現場確認をする決まりになっているようです。
ただし、その時々によって現場確認をする場合としない場合があり、100万円を超えていても写真や事故報告で状況が確認できれば書面のみで支払保険金額の査定が行われることも多いです。
また、大型の台風後のように、広範囲に被害が発生すると1件ずつ確認することが困難になりますので、損保会社にもよりますが、その基準が500万円超だったり、1000万円超になったりします。
なお、現場を確認するのは損害保険会社から委託を受けた損害鑑定人が訪問するケースが多く、損保会社としては損害鑑定人の計算した支払保険金をチェック、承認するという役割分担をしています。
現場確認が行われる場合、アポイントをとって損害鑑定人に状況を説明するステップがありますので、事故から保険金が支払われるまで早くても3週間程度はかかると思っておいた方が良いでしょう。
現場確認が行われる場合も、大型の台風後であれば、やはり+2週間~1か月程度は見ておいた方がよいと思います。
新価保険特約が付いている場合
事業用物件を対象にした火災保険では「新価保険特約」というものが付帯されている場合があって少し注意が必要です。
その名の通り”新価”で保険金額を設定して契約し、”新価(再調達価額)”で補償するための特約ですが、事故日から2年以内に復旧しなければ新価基準では保険金は支払わない内容になっています(復旧がなければ時価基準での保険金支払いとなる)。その代わり、保険料が10%割引されていたりします。
つまり、保険金を支払うためには復旧が条件になり、いつ復旧が完了したのか、または実際にいくら費用がかかったのかを申告する「復旧通知書」の提出が求められる場合があります。
場合があります、ということは求められないこともあって、修理費が小さい場合などは写真と修理見積もりだけで済むこともあります。
たとえば決算のために保険金を●月末までに支払ってほしい、というような場合、新価保険特約がネックにならないか、予め確認しておくと良いでしょう。
(注)記載のある各保険については一般的な内容の説明です。