取引信用保険とは?
主に製造業・卸売業向けの取引信用保険というものがあります。
販売先が倒産した場合、その売掛金(売掛債権)が貸し倒れ(回収不能)になってしまうことがありますが、その分を保険でカバーするという主旨の保険です。
事業を行う上で貸し倒れ損失の可能性がある場合は、一般的に経理上、「貸倒引当金」という準備金を用意しておきますが、その分を保険に転嫁して、事故(販売先の倒産)による費用の平準化を図ることもできます。
保険会社では、東京海上日動、三井住友海上、損保ジャパン、明治安田損保、AIGなどが取引信用保険を取り扱っています。
保険会社によっても商品内容、引受基準が異なりますが、以下だいたいのところをご紹介します。
保険契約できる業種 | 販売先が法人である製造業、卸売業で、売上高が年間5億円以上 | |
契約例 | 製造業 | 売上高15億円 保険料300万円 グループ会社を除く売掛債権100万円以上の全債務者が対象。与信管理は自社で実施しているものの万が一に備え貸倒リスクに備えて保険に加入。 |
卸売業 | 売上高500億円 保険料800万円 複数ある事業部門のうちの1事業部門の販売先が対象。直近で貸倒が数件発生していたことから保険会社による与信サポートも期待し保険に加入。 | |
製造業 | 売上高800億円 保険料700万円 子会社の販売先も対象にしている。ファクタリングにより選択的に貸倒のリスクヘッジをしていたが、ハズレてしまうことも考慮し取引信用保険に切り替えた。 | |
保険金が支払われない主な場合 | ・故意、重過失 ・販売先に債務不履行があることを知りながら締結した契約に関する損害 ・1か月を超える支払遅延がある販売先に商品を引き渡したことにより生じた損害 ・地震、噴火、津波、洪水、高潮、台風に基づく社会的・経済的混乱により生じた損害 ・戦争、外国の武力行使、革命、政権奪取、内乱、武装反乱による社会的・経済的混乱により生じた損害 |
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保険期間中の限度額の減額等 | 保険会社は、契約者の販売先の信用状況が悪化していると判断した場合、契約者へ通知・相談のうえ限度額の減額等を行う場合がある。 | |
対象とする販売先 | 5社以上から。選択付保はできないが、「売掛債権●●●万円以上」「●●事業部の販売先」など一定のフィルターをかけることは可能。海外の販売先は「輸出取引信用保険」で引受可能。 | |
最低保険料 | 概ね100万円から | |
見積もりまでの標準日数 | 2週間~1ヶ月程度 | |
縮小割合 | 95%が上限。事故(貸倒損失発生)の際は、貸倒損失の最大95%が保険金として支払われるという意味。 |
取引信用保険がいま安い?
色んな見方があるでしょうが、2012年頃からのアベノミクスの影響で日本の企業はそれ以前にくらべて内部留保が増えていると言われています。
東京商工リサーチによれば、1990年頃のバブル崩壊以降、1991年から毎年1万件以上の倒産件数があったものが、2014年から1万件未満となり、2017年は8405件であったとのこと。負債総額もバブル崩壊以降、一時期は年間20兆円あったものが、10兆円程にまで下がっています。
(東京商工リサーチ「全国企業倒産状況」より)
取引信用保険は販売先が倒産した場合の貸倒損失をカバーする保険ですので、倒産件数・貸倒損失額が減れば、保険金支払も減ります。
保険会社としては、取引信用保険の保険料を下げてもいいかな、という状況になっているようで、保険料引き下げ交渉をするには良い時期かもしれません。
企業の損害保険契約については、一度契約した保険料・保険料率が更新後も引きずられるケースが多く、安い保険料で契約している場合、更新時に保険料率の引き上げはしづらいものです。
住宅ローンの固定金利は、低い時に固定で長期的に借りるのが鉄則といいますが、それに似ています。
最低保険料が概ね100万円からと中小企業にとっては高めかもしれませんが、貸倒損失や販売先の与信管理として取引信用保険がうまく設計できる場合がありますので、気になる場合は保険代理店や保険会社に相談してみると良いでしょう。
(注)記載のある各保険については一般的な内容の説明です。