損保代理店の手数料と代理店の存在意義
お客様から直接尋ねられることは少ないのですが、保険料のうち代理店の手数料はどれくらいなのか気になる方もいらっしゃると思います。
ネットで検索すると、損害保険の場合、保険料の15~20%が代理店の手数料として一般的というサイトもありますが、概ねそんな感じだと思います。(実際には10%~20%程)
これは保険商品ごとに基本となる手数料率があって、それに加えて各損保会社から見たその代理店の評価に応じて手数料率が増減するような仕組みになっています。
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●●保険の基本手数料率 × その代理店の評価 = 適用される手数料率
取扱保険料の規模や、前年比増収率、事務クオリティなどが総合的に評価され、毎年、代理店の手数料率がいくらか変わります。
保険代理店の手数料は他の業種でいえば、自動車におけるメーカーの製造価格と、販売会社の販売手数料とか、小売店における仕入れ値と販売価格の差(粗利益)のような感じだと思います。
代理店によって手数料が違うということは、同じ保険商品・同じスペックでも代理店によって保険料が異なることもあるのかというと、それはありません。
同じ保険商品・同じスペックであれば日本全国どの代理店でも同じ保険料であり、各代理店による取り分が異なるだけ、ということになります。
他の業界からするともしかしたら不思議な感じがするかもしれませんが、その代理店独自で手数料分だけ値引きして保険料を割り引くということもできません。
「代理店がなければ保険料はもっと安くなるんじゃないの?」とおっしゃる方もいますが、代理店がなければ、その分保険会社の社員が契約手続きや事故の初動対応、契約変更手続きなどの顧客対応を行う必要が出てきて、やはり同様のコストまたは、保険会社社員の方が一般的には給与が高い傾向にあるので保険料はもっと高くなるかもしれません。
一方、ダイレクト系自動車保険のように代理店を介さずにネットで契約することで保険料が安いという保険も増えてきていますが、保険設計を顧客側で行う必要があることから、対象の保険としてはしばらく個人向けのシンプルな保険にとどまると思われます。
また、乗合代理店であれば複数の保険会社を取り扱うことで各社を比較して専門的なアドバイスを行うことが顧客メリットにもなっているし、代理店の提案力アップや保険会社との交渉力アップにもなっていると思います。
中には1つの保険会社の専属代理店で、顧客対応も保険会社任せという代理店もあるようですが、保険会社から存在意義が薄いと見なされれば、淘汰されていくかもしれませんね。
問題になった生命保険の手数料率
生命保険の場合は、商品や代理店のランクによっても異なりますが、かなり幅が広く代理店手数料率は1%程度~50%程度になることもあります。
ただし、生命保険は数十年など超長期に渡る契約が多いので、毎年何十%も手数料が代理店に支払われるわけではなく、初年度はXX%、2年目以降はほんのわずかで、その保険契約が続いていても数年で手数料支払いが終了というケースが多いです。
生命保険分野においては、販促キャンペーンのような期間があって、その期間に特定の生命保険商品が販売された場合、手数料の上乗せがあるなどの生命保険会社独自の施策がありました。
保険代理店は顧客の意向よりも手数料キャンペーンを優先してしまうのではないかということで、とりわけ保険ショップなどの対応が数年前に問題視され、2016年5月の保険業法改正にあわせて「顧客の意向把握」が義務付けられるようになりました。
では、それまでは顧客の意向は確認していなかったのかというと、そんなことはないのでしょうが、「顧客の意向把握義務」が出来たことで、その意向を事務上書面化する必要がでて、業法改正以前よりも丁寧に顧客の意向を確認する姿勢が生まれたと感じています。
(注)記載のある各保険については一般的な内容の説明です。