欧米に比べ日本企業は利益保険の加入率が低い
日本のほとんどの企業が火災保険(財物保険)に加入していると思いますが、利益保険については欧米に比べ加入率が低いと言われます。
業態にもよりますが、火災や自然災害で所有施設がダメージを受けた場合、財物の復旧にかかる費用よりも失われる利益の方が大きくなるケースがあります。
例)
・工場で火災事故。復旧までに1か月かかり、その間生産がストップした。
・スーパーマーケットが洪水被害を受け、復旧まで営業ができなかった。
・旅館・ホテルが土砂崩れにより被災。復旧まで営業ができなかった。
・落雷により風力発電施設が損傷。復旧まで売電収入がゼロになった。
近年、甚大化している自然災害でも、施設の修理代は火災保険でカバーされたけど、利益保険に加入していなかったために、その間営業できなくなった店舗や工場の売上減少は単純な損失になってしまったケースが多いといいます。
日本でも「ファンド系の契約者」は必ず利益保険に加入する傾向があって、たとえば不動産ファンドの場合、運営するビル等が罹災したときでも利益保険があれば予定していた収益を投資家に支払うことができます。
欧米企業の利益保険加入率が高いといわれる理由は、投資家と会社経営者の分離がより明確で、投資家に対する責任として利益保険にも加入しているのかな、と推測されます。
その意味では、日本の企業経営もだんだんと欧米化しているので利益保険の加入率も上がっていくのかもしれませんね。
利益保険の保険金額はどのように設定する?
利益保険は難しく捉えられがちですが、簡単にいえば「粗利」をカバーする保険ということになります。
(例)
1.売上 | 10億円 | |
2.原価(仕入) | 5億円 | ※変動費 |
3.粗利 | 5億円 | 1-2 |
4.経常費 | 4億円 | 人件費などの固定費 |
5.営業利益 | 1億円 | 3-4 |
利益保険のパンフレット等には、(固定費(経常費)+利益)/売上高で求められる利益率の範囲で約定補償率を設定してください、と説明されていることが多いです(文章だけだとちょっと分かりにくいですね)。
上記の例でいえば、
(経常費4億円+営業利益1億円)/売上高10億円=50%
50%の範囲内であれば約定補償率を自由に設定することができます。
約定補償率が50%であれば、保険金額は5億円になります。この場合、最大5億円まで保険が支払われる可能性があるということです。
(支払保険金額の例)
事故によって6か月稼働できず6か月分の売上が減少した
失われた売上5億円×約定補償率50%=支払保険金2.5億円
たとえば「何か事故があったら経常費だけカバーされればいいよ」という場合には、約定補償率を40%=保険金額4億円に設定すればよい、ということになります。
このほか、補償期間(1~12か月)や免責金額、免責時間なども複数パターン組み合わせて検討すると、納得感のある保険料・条件で契約できるものと思われます。
利益保険は財物保険に比べて、支払われる件数そのものは少ないため、見積もりをしてみると、意外と保険料が安い場合があります。
もし、利益保険に未加入の場合は、火災保険更新の際にでも保険代理店や保険会社に見積もりを依頼してみると、いざというとき役に立つかもしれませんね。
(注)記載のある各保険については一般的な内容の説明です。