災害からの復旧期間が大幅に短縮できるかもしれないサービス
事業用物件を対象とした火災保険に加入すると、パンフレットなどの「安定化処置費用」とか、「被災設備修復サービス」というものを見つけることができます。
ご覧になったことはありますでしょうか?
「ガイアの夜明け」で取り上げられたこともありました。
各保険会社で呼び名が異なりますが、サービス内容はほぼ同じです。
安定化処置費用 | |
被災設備修復サービス | |
緊急処置費用補償特約 | |
被災設備等修復サービス |
これらのサービスでは、火災や水害等で機械設備等が被災した場合、特殊な洗浄等の技術を用いて、通常よりも早く、リーズナブルに復旧することができるというものです。
火災事故が起きて生産設備が被災した場合、同等の性能をもつ生産設備を再調達するしかないと思ってしまう場面でも、彼らの修復技術をもってすれば問題なく使えるようになる場合も少なくない、といいます。
たとえば、特注の生産設備等で、再調達するまでに半年かかるところを、1か月で修復して生産を再稼働することができたら、その分の売上減少を食い止めることができるでしょう。
または、早く生産を再開させることで、重要な取引維持にも資することでしょう。
ただ単に、修理にかかった費用について保険金を支払うだけでなく、機械設備の復旧方法についてもこのような選択肢があると安心感が増しますね。
保険会社にとってもメリット大で、再調達にかかる費用よりも修復にかかる費用が安ければ、支払保険金も少なくて済みます。
また、利益保険に加入している場合も売上の回復時期が早まれば早まるほど、利益保険金の支払金額が少なくて済みます。
これらのサービスを提供しているのは、日本ではベルフォア社またはリカバリープロ社であり、各保険会社が提携をしています。
東京海上日動はベルフォア社と提携、ほかの損害保険会社はリカバリ―プロ社と提携しています。
なぜ東京海上日動だけベルフォア社なのか?
ベルフォア社の発祥はドイツで、1979年から災害復旧サービスを専門に展開し、現在では世界中に300もの拠点をもち7000名以上のスタッフで成り立っています。
日本では東京海上日動が2004年に初めて提携し、共同で出資、ベルフォアジャパン(株)を設立したとのこと。
したがって、ベルフォア社は東京海上日動が専任という形になり、他の保険会社は後追いで、同様のサービスを行うリカバリ―プロ社と提携する、という構図になったようです。
いずれもドイツのベルフォア社のグループであり、日本に2社あることでお互いに切磋琢磨する関係になっているのかもしれません。
ベルフォア社見学の感想
数年前に研修の一環で東京・葛西臨海公園駅近くにあるベルフォア社へ見学に行くことができました。
もともと「洗浄の会社」という程度にしか認識していなかったのですが、機械設備関係の修復技術の多彩さに感心した覚えがあります。
たとえば、コンピュータチップや半導体のようなものが火災で煤まみれになった場合、素人感覚では絶対に使えないと思ってしまいますが、特殊なイオン洗浄のようなもので洗うことで、漏電等のトラブルを起こすことなく回復させることができるとのこと。
必要に応じて真空状態で乾燥させたり、または機械や建物の素材等に応じて、いくつもの洗浄用液体が用意してあり、長年のノウハウの蓄積を感じさせるプロ集団だなと感じました。
実際の事故のときはどうすればよいのか?
ある顧客から火災事故が起きたと一報が入り、東京海上日動へ事故報告をした際、「ベルフォア社」をつかいませんか?と提案がありました。
(残念ながら?)そのときは小さな火災事故だったことと建物の極一部が焼けただけだったので、生産状況に支障をきたすこともなく、復旧費用も大きくなかったのでベルフォア社を利用することはありませんでした。
とくに火災や水害事故の際に活用できる場面がある復旧サービスであり、つかえそうな場合は、保険会社も積極的につかってほしいようです。
事故が起きてから早い段階であればあるほど打てる手が増えるそうなので、保険契約者(被保険者)にとっては、事故が起きた際、できるだけ早く保険代理店または保険会社へ連絡することが重要になります。
ただし、当然のことながら、被災物件を確認した結果、修復不可能または再調達した方が合理的と判断されることもあります。実際、現場立会から修復に至るケースは半分以下のようです。
修復する場合もしない場合も、かかる費用については保険会社が保険金として支払いますので、保険契約者の負担はありません。火災や水害等の事故があった場合にはベルフォア社またはリカバリープロ社を思い出すと良いかもしれませんね。
↓リカバリープロ社のHPより
(注)記載のある各保険については一般的な内容の説明です。