損害保険代理店の位置づけ
日本の損害保険は明治時代に福沢諭吉がアメリカから輸入してきたと言われています。
保険会社は保険商品を開発し、販売は全国各地の有力者に委託し保険代理店(当時は”代弁店”と称されていた)として販売活動を行ったのが始まりとのこと。
現在でも保険代理店が取り扱う保険料割合は91.4%(2018年度・損害保険協会より)となっており、保険代理店を通じて損害保険契約を行うことが一般的です。ちなみに保険会社との直接契約(直扱)は保険料割合で8.0%(2018年度)ありますが、保険会社と直接契約しても、代理店を通じて契約しても保険料に変わりはありません。
家電におけるメーカーと家電量販店のように、自動車におけるメーカーと販売会社のように、リース業界におけるメーカーとリース会社のように、損害保険においても、保険会社(メーカー)と販売会社(代理店)という役割分担がなされています。
▼保険代理店チャネル別の構成比(日本損害保険協会HPより)
専業代理店は2割弱で、半分が自動車関連ですね。
これは自動車販売会社や整備工場などがあたります。
▼代理店の数
約18万店あり、専属(取扱保険会社1社)が約8割、乗合が約2割といったところです。
保険代理店の役割については、日本損害保険代理業協会のHPに以下のように記載されています。
ちょっと漠然としているので、損害保険代理業を行っている私なりにシンプルに言い直すとすれば、保険代理店の役割とは、適切な損害保険契約と契約のメンテナンス、および保険金請求サポートにあると思っています。
損害保険代理店の役割(1)契約と契約のメンテナンス
生命保険と異なるところですが、代理店が保険契約の締結権をもっており、代理店が保険申込の意思を確認し、保険料を領収することで保険契約が成立します。
(ただし、保険金額が大きかったり、イレギュラーな契約については事前に保険会社から引受承認を得ておく必要があります。)
損害保険代理店の権限は以下のとおりです。
・保険契約の変更・解約などの申出の受付(クーリング・オフの受付を除く)
・保険料の領収
・保険料領収証の発行・交付
・契約者などの告知・通知の受領
(日本損害保険代理業協会のHPより)
損害保険契約にあたっては、対象物件や、業務内容、保険金額など、契約に必要な情報を代理店が確認を行います。そのうえで保険会社と連携をしながら見積もりを行い、契約を締結します。どういうものを対象としてどんなリスクを引き受けるのか、正しい情報を基に正しい保険契約になるよう努めるのが代理店のひとつの役割です。
また、契約中の損害保険について、内容の変更が発生することがあります。対象物件の変更(自動車であれば車両の入替等)や、追加、削除、解約、住所の変更、代表者の変更など、いざというときに期待した保険が支払われないということがないよう、適切に契約のメンテナンスを行っていくことも代理店の重要な役割です。
また、リスクや保険のプロとして、顧客が気づいていないリスクを指摘したり他社の事例を紹介したり、(ウザくならない程度に)新しい保険情報等の提供を通じて顧客のリスクマネジメントの一助となることも代理店に期待されるところでしょう。
損害保険代理店の役割(2)保険金請求サポート
保険事故が起きた際の保険金請求サポートも代理店にとって欠かせない役割です。
事故が起きた際、契約者(被保険者)がどのように行動し、保険金請求のためにどんな資料を用意すべきか速やかにかつ正確に契約者(被保険者)に伝える必要があります。
・事故日
・事故場所
・被害物件と状態
・事故形態(火災、落雷、風災、その他破損・・など)
・事故に至った状況説明
・写真
・修理見積もり
発生した事故について正確に必要な情報を持って、速やかに保険会社へ事故報告をし、保険金支払対象として問題なさそうか、出来るだけ早い段階で確認しておくことも、代理店が契約者(被保険者)から期待される役割のひとつです。発生した事故による損害が保険金でカバーされるかどうかが経営上重要な問題になることもあるでしょう。
ここで「保険会社はサポートしてくれないの?」という疑問がでるかもしれません。
もちろん、保険会社も契約者(被保険者)から保険事故があったと連絡を受ければ真摯に対応します。特に自動車事故は相手方、医療機関、レッカー業者、修理工場など関係者が多いので、保険会社が起点となって対応するケースが多いです。
感情論かもしれませんが、代理店が保険金請求時に頼れる一つの要素は付き合いの長さがあるかもしれません。保険会社の保険金支払担当者は、事故があってはじめてその契約者(被保険者)を知ることになりますが、代理店は少なくとも契約時から契約者(被保険者)のことを理解しているし、場合によっては数十年来の取引関係ということも少なくありません。
また、保険会社と代理店が異なるのは、保険金を支払うのは保険会社であり代理店ではありません。いくら保険金を支払ったとしても基本的には代理店は経済的にマイナスになることはなく、その意味では代理店は契約者(被保険者)の全面的な保険金請求アドバイザーとして機能するという見方もできます。
まとめ
損害保険代理店の役割は、
・正しい情報を確認し、正しい損害保険契約を行うこと
・適切に契約をメンテナンスすること
・リスクマネジメントの一助となること
・事故の際の保険金請求サポートを行うこと
といえます。
(注)記載のある各保険については一般的な内容の説明です。