「賠償責任保険が重複している場合、保険金はどのように支払われますか?」と質問を受けることがあります。
↓正解はどれでしょう?
1.両方支払われる(儲かってしまう)
2.一方からだけ支払われる
3.按分して支払われる
実際の事故の際には、保険会社や契約している保険の約款によりますが、正解に近いのは3「按分して支払われる」になります。
各保険会社の賠償責任保険の約款には、多くの場合、以下のように記載があります。
他の保険契約等がある場合において、それぞれの支払責任学の合計額が、損害の額を超えるときは、次の①または②に定める額を保険金として支払います。
①他の保険契約等から保険金または共済金が支払われていない場合
→この保険契約の支払責任額
②他の保険契約等から保険金または共済金が支払われた場合
→損害の額から、他の保険契約等から支払われた保険金または共済金の合計額を差し引いた残額。ただし、この保険契約の支払責任額を限度とします。
少しかみ砕いていうと、
①他の保険から保険金が支払われていない場合は、この保険から支払うよ。
②他の保険から保険金が支払われている場合、足りない分があったら差額を払うよ。
となります。
ここで疑問が生じるかもしれませんが、どっちかが先に払ったら、払ってない方の保険は払わなくて済むことが多くなる!?と思いませんか・・・?
もし、別の保険があると分かっていたら、「こっちの保険は支払いを控えておこう、いつの間にかあちらで解決してしまうかもしれないから・・」と思うかもしれません。
しかしながら、そういう不公平なことにはならず、保険会社は重複していると分かった場合、いずれかが先に保険金を余分に払っていれば、按分計算によって払い過ぎた分を相手保険会社に支払って完結させます。
<例>
賠償金800万円
A保険会社で支払限度額1000万円の賠償責任保険契約あり。
B保険会社で支払限度額600万円の賠償責任保険契約あり。
先にA保険会社から保険金800万円を支払った。
A保険会社はB保険会社に対して、按分計算により以下の金額を請求する。
A保険会社:800万円×1000万円÷(1000万円+600万円)=500万円
B保険会社:800万円×600万円÷(1000万円+600万円)=300万円
A保険会社は本来500万円を負担すべきところ、800万円を支払済みなので、B保険会社に対して300万円を請求する。
このやり方の損害賠償請求者(被害者)または被保険者(保険金請求者)のメリットは、2つの保険会社にそれぞれ別々に保険金請求手続きをしなくても済むことです。
以前は、按分した金額についてそれぞれ保険会社へ請求する必要がありました(独立責任額按分方式)が、2010年の保険法改正によって、どちらか一方へ請求し、あとは保険会社同士で調整してね、ということができるようになりました(独立責任額全額支払方式)。これもお客様本位の業務運営の一例ですね。
(注)記載のある各保険については一般的な内容の説明です。