賠償責任保険のたてつけ
賠償責任保険は通常、「普通保険約款」と「特別約款(特約)」から成り立っています。
“特約”と聞くと、オマケのような、またはトッピングのような印象を持ってしまうかもしれませんが、賠償責任保険の特約はその保険の性格を定めるもので、なくてはならないものです。
普通保険約款が、たとえば、賠償責任保険全体を通して共通の「保険金を支払う場合」や、「保険金を支払わない場合」、「保険金の種類」「契約者の告知・通知義務」など基本的なことを定めており、特別約款(特約)にて具体的にどんなリスクを補償するか限定したり、アレンジしたりしています。
たとえば「施設賠償責任保険」とよくいいますが、正式には、
賠償責任保険普通保険約款 + 施設所有(管理)者特別約款
となります。
↓他の賠償責任保険のたてつけ例
PL保険 | 賠償責任保険普通保険約款 + 生産物特別約款 |
請負業者賠償責任保険 | 賠償責任保険普通保険約款 + 請負業者特別約款 |
受託者賠償責任保険 | 賠償責任保険普通保険約款 + 受託者特別約款 |
このうえさらに、細かな特約を必要に応じて付帯したり、事故時には被害者からの請求に応じて保険金支払を行うので相手の心象にも配慮しなければならないなど、賠償責任保険は火災保険等のモノ保険に比べれば複雑度が高いと感じる方も多いのではないでしょうか。
↓損害保険種類の大別など
施設賠償責任保険 保険金を支払う場合
施設賠償責任保険は、普通保険約款と施設所有(管理)者特別約款の組み合わせでできており、この保険がどんな事故の場合に機能するのか理解するためには、普通保険約款と特別約款の両方の、「保険金を支払う場合」と「保険金を支払わない場合」を確認する必要があります。
たとえば。
賠償責任保険普通保険約款 被保険者が、保険期間中に発生した他人の身体の障害または財物の滅失、破損もしくは汚損について、法律上の損害賠償責任を負担することによって被る損害に対して保険金を支払います。 |
+
施設所有(管理)者特別約款 以下のいずれかの場合に保険金を支払います。 ① 被保険者による保険証券記載の不動産または動産(施設)の所有、使用または管理に起因する損害 ② 施設の用法に伴う保険証券記載の仕事の遂行に起因する損害 |
簡単にいえば、以下のようになります。
①施設の所有、使用、管理に起因した対人・対物事故を補償する。
②仕事(業務)遂行に起因した対人・対物事故を補償する。
なお、一般的な施設賠償責任保険では以下のような場合は保険金が支払われません。
ケース | コメント |
故意 | わざと起こした事故はダメですよね。ケンカなどもダメです。 |
第三者(被害者)との間に特別に約定した(勝手に決めた)賠償責任 | たとえば「これを壊したら100万円」など当事者間で決めている契約書などがあっても、保険会社が支払う保険金は法律に基づいて支払うべき時価額がベースになりますので、差額が発生するかもしれないという意味です。 |
被保険者が所有、使用、管理するものを壊した場合 | たとえば借りている建物なら、借家人賠償責任保険でカバーします。借りたり預かったりしている財物なら受託者賠償責任保険でカバーします。自社所有の物件を誤って壊した場合は、火災保険、動産総合保険などのモノ保険の領域になります。 |
被保険者の同居の親族に対する賠償責任 | 同居の親族は保険上、他人ではないのですね。 |
使用人(従業員)が勤務中にケガした場合 | 勤務外(プライベート)でケガをして、その責任が会社(被保険者)にある場合は別です。 |
地震、噴火、洪水、津波などの天災によるもの | 天災による損害は基本的に法律上の賠償責任が生じないとされています。ただし、施設の管理状況が悪かったことが原因であるなら話は別です。 |
原子力関係 | |
アスベスト関係 | |
工事中の事故 | 請負業者賠償責任保険でカバーします。 |
航空機、パラグライダー等、自動車、船舶の所有、使用、管理に関する事故 | 航空機なら航空機保険、パラグライダー等ならスポーツ賠償責任保険、自動車による事故は自動車保険で、船舶なら船舶に関する保険が別途あります。 |
提供済みの飲食物に起因する事故 | 生産物賠償責任保険でカバーします。 |
など
また、保険金が支払われない場合(免責事項)については、その免責事項を削除する特約をさらに付帯することで、補償対象とすることができるようにすることができる場合もあるなど、やはりちょっと複雑なので、契約にあたっては保険代理店や保険会社からよく説明を受けるようにしましょう。
(注)記載のある各保険については一般的な内容の説明です。