損害保険会社が破綻したら損害保険契約者保護機構の出番
銀行が破綻したらペイオフ方式によって元本1,000万円までは最低保護される仕組みですが、損害保険会社が破綻したら、保険契約はどうなるのでしょうか?
もし損害保険会社が破綻したら、損害保険契約は、損害保険契約者保護機構の補償の対象となります。ただし、すべての契約が100%補償ではなく、契約者の区分や保険商品によって条件が異なります。
対象者:保険契約者が、個人・小規模法人(常時勤務する従業員20人以下)・マンション管理組合
【ただし、下表中、★印の保険は保険契約者を問わず補償の対象】
(契約者保護機構HPより)
自賠責や家計地震(個人の住宅物件)は100%補償されますが、それ以外は保険商品により80%~100%の補償となっております。
また、従業員が常時20名以上の事業者については、火災保険や賠償責任保険、動産総合保険、運送保険、労災保険などは補償対象にならないので、認識しておく必要がありそうですね。
保険料を払っているのに、事故時に保険金が払われないのはまったく理不尽なことだと思いますが、損害保険会社が絶対に破綻しないとも言い切れないので、予め重要事項説明書等に謳っているのでしょう。
これまでに破綻した損害保険会社
では、これまでに破綻した損害保険会社はどれだけあるのでしょうか?
戦後の1949年に設立された第一火災海上保険は、「マルマル保険」という積立型の保険が有名で、引受保険料の半分程がマルマル保険という時期もあったとのことです。高い予定利率で契約ができて、満期時には契約者へ支払った保険料をはるかに上回る満期金を支払う仕組みでしたが、バブル崩壊後の低金利時代到来の影響を受け、その高い予定利率が足かせとなり2000年に破綻しました。
第一火災海上保険の契約については損害保険契約者保護機構が引き取り、現在でも契約者対応を行っています。
1920年(大正9年)に設立された大成火災は小規模な損害保険会社で、主に再保険を引き受けていたとのことですが、2001年のアメリカ同時多発テロの影響で約700億円の保険金支払が発生、債務超過に陥り2001年に倒産しました。
そもそもその事故がなくても2002年4月には安田火災、日産火災と合併して損保ジャパンとなる予定だったそうです。そのまえに破綻してしまったため、大成火災で契約していた方々にとっては災難でした。2002年に先に発足した損保ジャパンに吸収される形となりましたが、自賠責や自動車保険、家計地震保険、個人の火災保険など一定の保険契約以外は、契約条件の変更が余儀なくされたようです。
大成火災は損保ジャパンが救済保険会社となり、損保ジャパン(現・損保ジャパン日本興亜)が契約者対応を行っていますが、救済保険会社が現れなかった第一火災海上保険は損害保険契約者保護機構が契約者対応を行っています。
まとめ
損害保険会社は、いまのところ上記のように2社しか破綻の事例がないことと、そのような前例を踏まえ各社、財務内容を強化しているので、格付的に見ても破綻するような会社はいまのところありません。
昨今の自然災害増加があったり、アメリカのハリケーンや山火事で保険金支払がかさんだと言っても最終的には黒字決算となっている損保会社がほとんどです。
ただ、長期的に見れば収入保険料の半分以上を占める自動車保険が、自動運転技術などで事故が減り保険料が減っていくとすれば、経営は厳しくなっていくのかもしれません。
自社が契約している保険会社の財務内容や格付あたりは時折チェックしておく方が望ましいでしょう。また、もし破綻の兆候がある場合はすぐさま契約を解約して、他の保険会社に乗り換える検討もありかもしれません。
(注)記載のある各保険については一般的な内容の説明です。