就業中の熱中症の場合
従業員が就業中に熱中症になって搬送された場合、会社で加入している保険はつかえるのでしょうか?
まずは政府労災を確認します。政府労災(労災保険)は、労働者が業務上または通退勤中の事故によってケガをしたり、業務上の事由によって病気になった場合、療養給付金や休業給付金、遺族年金など必要な補償が受けられる制度です。業務上の熱中症と労災認定がされれば一定の給付が受けられます。
政府労災とは別に、保険会社で労災総合保険に加入している場合、「職業性疾病特約」が付いていて、労災認定があれば保険金が支払われます。熱中症は、ケガというよりは症状であり、職業性疾病特約の付帯ががないと保険金支払いの対象になりません。ただし、労災総合保険は死亡、後遺障害、休業補償が基本なので、単に通院や入院だけではつかえません。労災総合保険をつかうときは、大きな事故の場合に限定されるでしょう。
政府労災の認定を保険金支払いの要件としない傷害保険系の保険に加入している場合、熱中症も補償する特約が付いていれば、熱中症で搬送された場合、保険がつかえることになります。傷害保険系の保険には入院、通院も補償項目として選択できますので、それらも契約していれば、熱中症による入院、通院でも契約の保険金日額が支払われます。
就業中の熱中症事故の場合、企業側には安全配慮義務違反を問われる場合があります。熱中症になりそうな勤務状況に対して適切な措置をとっていなかった場合、その責任を求められるということです。仮に熱中症で従業員が死亡してしまった場合、政府労災や傷害保険では補えない額の損害賠償金が課されることもありますので、そういった場合に備えて、たとえば1事故あたり〇億円まで補償されるような使用者賠償責任保険に加入しておくのもひとつの手段です。
業務外の熱中症の場合
業務とは関係なく熱中症になった場合、企業が加入する保険はつかえるのでしょうか?
まず、業務外なので政府労災や労災総合保険はつかえません。
傷害保険系はフルタイム補償になっていて、熱中症も補償する特約がついていればつかえますが、企業が契約している傷害保険系の保険は就業中のみを補償する条件であることが多いです。
また、業務ではなく社内の行事としてレクリエーション保険に加入することがありますが、レクリエーション保険にも熱中症も補償する特約を付帯することができる保険会社もあるので、確認しておく必要があるでしょう。
熱中症も補償する特約については、特約保険料はさほど高くないことが多いので、夏場であれば屋内行事だとしても付帯しておくと安心ですね。
まとめ
熱中症による事故対して、保険で備えておこうと考える場合、保険料との見合いにはなると思いますが、労災総合保険なら職業性疾病特約を付帯し、使用者賠償責任保険も契約しておくのがベター。
傷害保険系なら熱中症も補償する特約をつけて、使用者賠償責任保険がつけられるタイプの商品なら付帯しておくのがベター。
レクリエ―ション保険も、夏場の行事については熱中症も補償する特約をつけておけばいくらか安心でしょう。
(注)記載のある各保険については一般的な内容の説明です。