賠償責任保険で支払う保険金の種類
賠償責任保険は、カバーするリスクや業種等に応じて様々な種類がありますが、基本的な賠償責任保険(一般賠償責任保険)では以下のような場合に保険金を払うことになっています。
少し噛み砕いていえば、対人・対物事故を起こしてしまって賠償義務を負うとき保険を払うよ、ということになります。
自動車保険を考えると分かりやすいと思いますが、運転中に事故を起こしてしまい、他人をケガさせたり、他人の車などの財物を壊してしまった場合、対人または対物事故として保険会社は保険金を支払います。
なお、対人・対物事故の際に保険が機能するのが一般的な賠償責任保険ですが、対人・対物事故がなくても経済的損害を与えてしまった場合の少し変わった賠償責任保険(専門職業賠償責任保険、E&O保険、業務過誤賠償責任保険などと呼ばれる)も存在します。
賠償責任保険から支払われる保険金には以下のような種類があります。
・損害賠償金
・損害防止費用
・緊急措置費用
・争訟費用
・協力費用
・権利保全行使費用
たとえば、業務上、対人事故を起こしてしまったとして・・・
損害の拡大を防止するために何らかの手当てをし(損害防止費用)、被害者に対して応急手当をし(緊急措置費用)、裁判を起こされたので弁護士を雇ったり応訴をし(争訟費用)、保険会社の求めに応じて調査協力を行い(協力費用)、被害者の治療完了後に治療費・慰謝料・休業損害について支払った(損害賠償金)。この件は、別の加害者もいたため、その会社へ内容証明を送り、過失割合分の求償を行った(権利保全行使費用)。
こんな場合もあるかもしれません。
賠償責任保険の保険金支払いまでの流れ
単純な物損事故の場合(工事作業中の対物事故など)を想定して、賠償責任保険が支払われるまでを見ていきましょう。
1)損害額の確認
壊れたものが修理可能なら修理代、修理不能なら修理不能であることを被害者側から示してもらいます。また、対物事故は「時価額」までが法律上の賠償責任の範囲とされるので、そのものの取得時期や取得価額についても確認を要する場合があります。被害者側にこれらを依頼するのは気が引けるかもしれませんが、賠償事故については基本的に被害者側に被害の立証責任があるとされていますので何とか協力してもらいましょう。
2)支払保険金の認定
保険会社が、写真や現物をもって被害物件の確認を行い、賠償すべき金額および支払保険金の認定を行います。免責金額が適用される場合は、免責金額が差し引かれての保険金支払となります。
3)示談書の取り交わし
当該事故につき、加害者が被害者に対してXXX,XXX円を支払うことで合意し、賠償金(または保険金)を支払う。その後いかなる申し立てもしない、というような示談書を作成します。金額が小さかったり、信頼に足る相手の場合には示談書を省略することもあります。(自動車事故も考慮すれば示談書省略の方が圧倒的に多いでしょう。)
4)保険金請求書類の提出
保険会社所定の保険金請求書、および示談書写し(または示談書省略に関する確認書)などを保険会社へ提出します。保険金の支払先をどうするかも確認する必要があります。
・被害者へ保険金を支払う(免責金額がない場合は被害者へ支払うこともあるでしょう)
・被保険者へ保険金を支払う(すでに立て替えている場合、被保険者へ保険金を支払います)
・修理業者へ保険金を支払う(修理業者に直接保険金を支払うことも可能です)
5)保険金支払い
保険金請求書類が揃ったら、通常1~2週間程で保険金が支払われます。
まとめ
賠償事故は相手のあることなので、なかなかスムーズに進まないことも多いです。
自動車保険や個人賠償責任保険等は保険会社の示談交渉サービスがありますが、企業が契約する賠償責任保険(自動車保険以外)は保険会社による示談交渉サービスはありませんので、直接相手とやり取りをする必要があります。
相手がもともと見ず知らずの人だったり、場合によっては取引先だったり、関係者だったりと様々な関係性の中で、相手の気持を汲みながら慎重に事を進めます。
ただし、慎重になりすぎるあまり解決までに相当の時間がかかってしまうこともあるので、保険代理店や保険会社のアドバイスを受けながら進めていきましょう。
(注)記載のある各保険については一般的な内容の説明です。