新型コロナウイルスの感染拡大が続いています。
外出や旅行を控えたり場所によっては禁止されたりと、旅行、宿泊、飲食業界だけでなく、人員確保ができなくなってしまったエリアの製造業とそれに関連する流通網、販売店などあらゆる業界の企業活動に大きな影響が出ています。
最も感染拡大が深刻な中国の2020年の経済成長率はかなり落ち込むというエコノミストの予測も出ているようです。
予定外の損失に対して経済的なカバーを行うのが「保険」ですが、日本でも観光業のキャンセルや商業施設の客足減、イベントの中止など様々な影響が出ているなか、保険でカバーできるものはあるのでしょうか?
売上減少について
(対応できる保険は基本的にはない)
火災保険は一般的に「財物保険」と「利益保険」に分かれておりますが、この利益保険は、保険の対象物(工場設備や店舗施設など)が物的損傷を被って、その結果、予定していた売上が減少した、という場合に利益を補てんする、という性質です。
したがって、感染症拡大による旅行・イベントなどのキャンセルや、工場稼働停止、販売低迷についてはこの利益保険は対応できない、ということになります。
レアケースとしては、デリバティブ商品と呼ばれるものがあります。
保険会社によっては、一定以上の「なにか」が生じた場合、その企業の損失額とは関係なく、予め決められた金額を支払う、という仕組みです。
“その企業の損失額とは関係なく”というところが保険との違いですね。
デリバティブといえば、一定以上の気候変化によって決まった金額を支払う「天候デリバティブ」とか、決められたエリアで一定上の震度が認められた場合に決まった金額を支払う「地震デリバティブ」が有名です。
過去には新型インフルエンザに対応したデリバティブ商品が発売された経緯もあるので、近いうちに新型コロナウイルスに対応したデリバティブ商品も開発されるかもしれません。
興行中止保険
(基本的には保険金支払対象外)
興行中止保険は予定していたイベントが悪天候や交通機関の事故などによって開催できなくなった場合の既に支出していた費用やチケット払い戻し費用をカバーするものですが、一般的に感染症リスクについては保険支払い対象外になっています。
海外旅行保険
(疾病補償がつかえる)
海外に旅行・出張中に感染または発病した場合、海外旅行保険が使えます。帰国後の治療にも一定日数適用されるので、業務で中国に行ってもらっていた方の発症などには使えるでしょう。
傷害保険系
(保険金支払いの対象にならない)
傷害保険や労災総合保険、業務災害系の保険などは、主にケガに対する保険なので、感染症に対応できません。
医療保険
(入通院に応じた保険金が支払われる)
従業員向けに医療保険まで加入している企業は少ないですが、一般的に医療保険は病気・ケガでの入通院に対し、日額XXXX円または、一定の金額までなら治療費全額をカバーするものもありますので、感染症治療に対応可能です。
賠償責任保険
(保険金支払いの対象にならない)
賠償責任保険は、法律上の賠償義務を負うことによって負担する被害者への賠償金等を保険としてカバーするものです。感染症罹患や感染症拡大による機会損失などについて法律上の賠償義務を負うということは考えにくい(不可抗力)ため、賠償責任保険が使えるケースはほぼないと考えてよいでしょう。
(注)記載のある各保険については一般的な内容の説明です。