当事者間の都合で保険金の振込先は選択できる
業務上、他人への対人賠償・対物賠償事故が発生してしまい、賠償責任保険の保請求をする場合、「保険金は自社で受け取ってもいいんですか?」という質問をいただくことがあります。
対人賠償で保険支払対象となる費用の例
・治療費(関連する交通費含む)
・休業損害(過去3か月の平均日額×休業日数など)
・慰謝料(一定の基準がある)
対物賠償で保険支払対象となる費用の例
・損害物の修理費用
・修理不能の場合、その時価額
・代替物のレンタル費用など(車でいうところの代車費用)
たとえば、自社で相手方へ賠償金を支払った(立て替えた)場合、その金額について保険会社が認定すれば、その分を自社に振り込んでもらうことが可能です。
免責金額や縮小支払方式などで賠償金の全額を保険金でカバーできない場合は、いったん会社から被害者に対して賠償金を支払って、その後、保険金は自社で受け取る、という流れが多いと思います。
たとえば・・
・賠償金50万円
・賠償責任保険の免責金額5万円
・認定された保険金45万円
という場合。
自社から被害者宛に賠償金50万円を支払った後、保険金45万円を受け取る。
(※基本的には、賠償金を負担する前に保険金を受け取ることはできない)
たとえば被害者に対して、「保険会社から45万円、会社から5万円」というように分けて入金されたらさらに気分を害するかもしれませんよね。
一般的には賠償保険金を自社で受け取る場合、保険金請求書類は以下のようになります。
(実際の保険金請求の際は、代理店や保険会社に確認ください)
・保険金請求書
・示談書(ない場合は念書)
・自社から被害者へ賠償金を支払ったことが分かるもの(振込伝票など)
賠償金があまりにも大きくて自社で立て替えられない場合は、仕方なく保険金でカバーできない差額を別途被害者へ支払うということになりますので、それを避けるためにも賠償責任保険の免責金額はできるだけゼロ円にしておくのが良いと思います。
また、たとえば対物事故の場合、修理業者に賠償保険金を支払うことも可能です。修理業者に直接、保険金を支払うと、自社または被害者から修理業者へ振込むというワンクッションが不要になるのでお金の流れがスムーズになります。
保険金請求権はあくまでも被保険者にある
「被害者が保険会社に直接、保険金請求することはできますか?」と聞かれることがあります。
自賠責保険を例外として、賠償責任保険の保険金請求の主体は被保険者にあって、他の誰かが代わりに請求することはできません。
したがって、被害者が被害を受けているからといって、自社の加入している保険会社をつきとめて、勝手に保険金請求することはできませんのでご安心ください。
賠償事故に備えて認識しておくべきこと
賠償事故はスムーズに解決するためにも、相手方の心象を悪くしないよう慎重に進めていく必要があります。
起こりがちなジレンマとして、保険契約者(被保険者)側は、保険を使いたいので、保険金請求のために相手方から様々な情報(対物事故なら、写真、修理見積り、購入時期、購入金額、事故時の詳しい状況など)を提供頂きたいのですが、相手方とすれば、保険など関係なく必要な賠償金を早く払ってよ、ということがあります。
分かりやすい損害状況なら良いのですが、関係者が多いなど複雑な事故の場合、下手をすると相手方が事故の調査に非協力的になってしまうケースもあります。
賠償事故に備えてまず認識しておくべきことは、保険を使う使わない関係なく、法律上賠償すべき金額を確認したいので、色々とご協力願いたい、というスタンスを持っておくことです。
相手方へ協力を要請する際、「保険会社から求められているので」というよりも「会社として必要になるので」と申し出る方がベターかもしれませんね。
(注)記載のある各保険については一般的な内容の説明です。