2018年9月4日前後に関西地区を襲った台風21号は凄まじい威力で、たまたま関西圏にて勤務していた私としては人生で最も強烈な風力を体感した出来事でした。
当時、関西圏の担当取引先は数十社ありましたが、施設を保有している企業は、屋根、壁、ガラス破損など多かれ少なかれ何らかの物的被害があり、被害がなかったという企業はごくわずか、という感じでした。
2018年は6月の大阪北部地震、7月の豪雨(岡山等)、8月の台風20号、9月の台風21号(関西圏)、台風24号(関西圏)、北海道地震など、大きな災害が立て続けに起こり、自然災害の猛威にさらされました。
2018年9月の台風21号被害による保険金支払はどれだけ?
損保協会によれば、風水災による過去の支払順位は以下のようになっているとのこと(2019.3末時点)。
順位 | 災害名 | 地域 | 対象年月日 | 支払保険金 | |||
(単位:億円) | |||||||
火災・新種 | 自動車 | 海上 | 合計 | ||||
1 | 平成30年台風21号 | 大阪・京都・兵庫等 | 2018年9月3日 | 9,363 | 780 | - | 10,678 |
~9月5日 | |||||||
2 | 平成3年台風19号 | 全国 | 1991年9月26日 | 5,225 | 269 | 185 | 5,680 |
~28日 | |||||||
3 | 平成16年台風18号 | 全国 | 2004年9月4日 | 3,564 | 259 | 51 | 3,874 |
~8日 | |||||||
4 | 平成26年2月雪害 | 関東中心 | 2014年2月 | 2,984 | 241 | - | 3,224 |
5 | 平成11年台風18号 | 熊本・山口・福岡等 | 1999年9月21日 | 2,847 | 212 | 88 | 3,147 |
~25日 | |||||||
6 | 平成30年台風24号 | 東京・神奈川・静岡等 | 2018年9月28日 | 2,946 | 115 | - | 3,061 |
~10月1日 | |||||||
7 | 平成30年7月豪雨 | 岡山・広島・愛媛等 | 2018年6月28日 | 1,673 | 283 | - | 1,956 |
~7月8日 | |||||||
8 | 平成27年台風15号 | 全国 | 2015年8月24日 | 1,561 | 81 | - | 1,642 |
~26日 | |||||||
9 | 平成10年台風7号 | 近畿中心 | 1998年9月22日 | 1,514 | 61 | 24 | 1,599 |
10 | 平成16年台風23号 | 西日本 | 2004年10月20日 | 1,112 | 179 | 89 | 1,380 |
11 | 平成18年台風13号 | 福岡・佐賀・長崎・宮崎等 | 2006年9月15日 | 1,161 | 147 | 12 | 1,320 |
~20日 | |||||||
12 | 平成29年台風21号 | 全国 | 2017年10月21日 | 1,146 | 71 | - | 1,217 |
~23日 | |||||||
13 | 平成16年台風16号 | 全国 | 2004年8月30日 | 1,038 | 138 | 35 | 1,210 |
~31日 |
2018年9月の台風21号による保険金支払は1兆円を超え風水災の中では過去もっとも保険金支払が多い災害になってしまいました。
しかも、1年半も経過した現時点(2020年2月)で保険金支払はまだ完全には終わっていない、ということです。
上の表には過去大きな保険金支払があった13件が記載されていますが、2018年(平成30年)が3件も入っています。また、すべて平成の時代のものになっていますが、これは風水災の威力が増しているだけではなく、昔よりも保険の契約金額が増えているから、ということも大きく影響しているでしょう。
ちなみに、地震で過去もっとも多くの保険金支払があったのは2011年3月の東日本大震災で、約1兆3000億円です。
保険金請求手続きの劇的な簡素化措置
各保険会社によっても対応は少しずつ異なりますが、2018年の台風20号、台風21号、台風24号に対する保険金請求手続きについては大幅な簡素化が図られました。
通常は、保険金請求にあたり、およそ100万円を超えるような損害ならば損害鑑定人による現地確認を要する、というのが一つの基準になっていますが、件数が膨大なため、保険会社により現地確認は500万円超や1000万円超が目安、と大きく引き上げられました。
感覚的には、数百万円の保険金支払にあたって、損害状況が写真と修理見積もりで確認できれば、現地確認なしで保険査定が行われていたようです。
また、保険金請求に必要な書類として、通常は一定以上(例:500万円以上等)の請求になる場合、保険金請求書のほか、印鑑証明や、履歴事項全部証明書なども必要とされますが、ほぼ全件、保険金請求書だけでOKとなっていたり、保険会社によってはXXX万円以下ならFAXで振込先を教えてくれれば保険金請求書も不要、などかなりの簡素化が図られました。
それでも全国から、普段は保険査定をしていない保険会社社員が応援として交代で招集されたり、OBを招集したりと対応に追われていたので、通常業務にも支障をきたしていましたが・・
一方では、風水災に関して過去最大の保険請求に追われたことで、保険査定の簡素化や、IT技術を使った効率化、保険会社間の協力など、今後に生かされる仕組みも構築されるきっかけになった面もあるようです。
(注)記載のある各保険については一般的な内容の説明です。